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chapter3

LastGuardianIIStarting Stars

chapter3「Place」

壁にもたれかかって、誰かが通るのを待ち続け5分程度。
ついに、通路の奥から人影が見えた。
その人影も、こっちの存在に気づくなり、駆け足で向かってきた。

???「おおっ!やっほ~、初めまして!レ~ド君!」

レドナを見るなり、耳の痛くなるような明るい声で、挨拶をしてきた。
あまりの元気のよさに、返答に困る。
それが表情に出たのか、相手の少女はそれを察し、自己紹介をした。

エンフィ「そんな困った顔しないでよ~。
     私はエンフィ、エンフィ・ユライス、ここのオペレーターやってるよっ!よろしくね!」
レドナ「お、おう、俺は・・・ってもう知ってるよな。
    よろしく、エンフィ」

さっき、"レド君"と呼んだということは、こっちが誰であるか名乗るだけ二度手間であると思った。
それに、ここのオペレーターと言うことは、きっとここのカードも持っていることだろう。

エンフィ「ふ~ん、ふむふむ」

なにやら、エンフィが珍しいものでも見るようにレドナの周りを一周する。

レドナ「え・・・、な、どうかしたのか・・・?」
エンフィ「いやいやぁ、漆黒の破壊神なんて物騒な名前ついてるから、てっきり筋肉バカかと思っちゃってさ~。
     それが案外美少年だったら、嬉しいもんだよ?」

だよ?と言われても、返答し辛かった。
適当に相槌を打って、本題に入った。

レドナ「ところで、ヴァルニスに言われてこっち顔出したんだけど・・・」
エンフィ「あっ、IDカードのことでしょ!?
     私もそれヴァルニーに渡し忘れちゃってさ・・・・ほんっとごめん!」

そういって、エンフィはポケットから白のテレフォンカードほどの大きさのカードを取り出した。

『XXXX IV Extend Station
ID:000984 CODE:XLSSR
NAME:Redona Genesic
Lv:AA+』

と、銀色の文字で書かれてある。

エンフィ「これで、ここのLvAA+以下の施設には出入りできるよ~。
     といっても、ここにLvA以上のところはないけどね」

苦笑しながら、エンフィが言う。
それから、再び表情一転し、

エンフィ「さ、シーちゃんが待ってるからはやく司令室に行こっ!」

そう言って、自分のIDカードを通した。
2秒後、目の前の扉が、その大きさからしてありえない速度で開いた。
この世界であるから、特殊電子的云々が関与してくるのであろう。
足早に入るエンフィの後を、"シーちゃん"という人物がまだ分からないままレドナが続いた。

司令室は、やはりというほどに広すぎた。
天上は見上げるほど首が痛くなりそうなほど。
正面には、地球の大型ワイド液晶テレビなど比べ物にならないほどのモニターが数個。
周辺に電子機器が大量に設置してある。
どの機器のモニターや、測定針が忙しくうごめいていた。

エンフィ「ただいま~。
     レド君連れてきたよ~」

司令室の中心部、大きな椅子に座った人に向かって、エンフィが声をかけた。

???「あら、意外と早かったのね」

その司令官らしき人物、緑の長い髪の、すこし背の高い女が立ち上がった。

シーフォ「初めまして、レドナ君。
     ここ第44エクステンドステーション司令官、シーフォ・コーライズよ」

どこか、香奈枝を連想させる。
きっと、それは優しさの持ち主であることをあらわしているのだろう。

レドナ「よろしくお願いします、コーライズ司令」

さすがに、年上以前に、階級上の人には敬語を使う。
兵士としては、常識であり、レドナにとっては雰囲気的でしか知らないことだった。

シーフォ「ふふっ、そんなにカチカチにならなくていいわよ、レドナ君。
     呼ぶときも、シーフォでいいわ」

畏まることが嫌いなレドナにとっては、好都合の発言だった。

レドナ「じゃ、遠慮なくさせてもらうよ、シーフォ」
シーフォ「えぇ、よろしくね」

シーフォはにっこり微笑んで、握手をした。    

レドナ「ってことで、聞きたいことがかなりあるんだが・・・」
エンフィ「ガブリエルの事と、エクツァーンモデルの事と、第44エクステンドステーションの事でしょ?」

さっとエンフィが、レドナの思っていた3つを的確に当てた。

レドナ「頭がいいオペレーターで助かるよ」
エンフィ「まぁ~ね~」

自慢げに言うエンフィ。

シーフォ「それについてはレドナ君に十分に知っておく必要があるから、きちんと教えるわ」

そういって、シーフォは再び大きな椅子に座った。
シーフォが目で合図すると、エンフィは了解と言って、中央のモニターと配線で繋がれている端末を操作した。
すると、モニターにさっき戦った、白い蟹のような化け物、ガブリエルが映し出された。

エンフィ「まずは、コイツの事について説明しとくね。
     レド君も戦ったから分かると思うけど、ガブリエルは物理攻撃を一切遮断する特殊な何かを持ってるんだ」
レドナ「確かに、グリュンヒル零式の攻撃を止められた時は正直焦った」

脳裏で、さっきの戦闘が思い描かれる。

エンフィ「でも、コイツにも弱点があるんだよ、それが"レムリア"。
     けど、レムリアは連発して使える代物じゃないんだよね~・・・、そ・こ・で!」

再び端末をカチカチと操作する。
すると、モニターが一転し、2本グリュンヒルEXが映し出された。
1本は外部装甲を、1本は内部構造をあらわしていた。

エンフィ「開発されたのが、エクツァーンモデル!!
     レムリアの術式を詰め込んだ弾丸を武器内部で発砲して、武器にレムリアを纏わせるのさ!」
レドナ「またエクステンドのお偉いさんも、すげーの作ったな・・・。
    ぁ、でもヴァルニスは"第二世代エクツァーンモデル"って言ってたけど」
エンフィ「あぁ~、それはあんまし気にしなくていいよ。
     第一世代エクツァーンモデルが失敗に終って、それを改修して第二世代になっただけだから」

気にしなくていい、と言われても、その裏には相当な費用や犠牲が出たのではと思う。
しかし、今は話を進めるのが先だということで、レドナは黙っていた。

エンフィ「じゃ、話を戻すね。
     それで、このエクツァーンモデルにも、プログレサーが憑いてるんだ。
     だから、使用者の意思に応じて、自動で弾丸をロードするわけ!」
レドナ「こりゃ、設計考案者には頭が下がるな」

冗談半分で、レドナが呟いた。
すると、その言葉に対し、エンフィが物凄い勢いで食いついてきた。

エンフィ「凄いと思う!?思う!!??
     えへん、じつはこれの製作には私も関わってるんだよ~!」
レドナ「マジかよ!?」

この死ぬほど元気な彼女が、この物騒かつ複雑な武器の製作に関与しているとは考えづらかった。

エンフィ「ほんとにこの開発は難しくてねぇ・・・・。
     素材にはLK合金を使うか、エレストラントメタルを使うかで大きく意見が分かれたり。
     総重量を考慮して、RTF排気ダクトから、RS型に変更させたり・・・」
シーフォ「オホン、エンフィ~?」

延々と語り続けそうなエンフィを、咳払いでシーフォが沈めた。

エンフィ「えへへ、ち、ちゃんと続けま~す。
     ってことで、まぁわからない事があれば遠慮なく聞いてね!」
レドナ「あぁ、分かった」
シーフォ「じゃ、次はここが置かれた"理由"ね。
     これについては、私から話すわ」

ふと、シーフォの声が深刻になる。

シーフォ「レドナ君は、シュレッケンウェポンって知ってる?」
レドナ「太古の賢者達が編み出した、危険な産物のことか?」

シュレッケンウェポン、別名、恐怖の道具。
製作者は太古の賢者達、数は不明。
それを使用したものは、爆発的な力を得る。
それだけであれば、問題はない。
だが、シュレッケンウェポンの中には、力に代償を払わなければならないものがある。
たとえば、一生人の血を飲み続けなければならないや、日に当たることができないなど。
それゆえに、使用が禁止され、エクステンドでは発見されたシュレッケンウェポンは回収、厳重保管している。

シーフォ「えぇ、その中の"デモンアルター"と言う、禁断の書物が何者かに盗まれたの」

エンフィが、端末を操作し、モニターにそのデモンアルターを写した。
茶色い本で、表面には金色の十字架が鮮やかに書かれている。

レドナ「で、そのデモンアルターってのがこの神下付近にあるから、それを奪還しろと?」
シーフォ「さすが、察しが早いわね、でも、それだけじゃないの。
     このデモンアルターは、所持者を自らが選ぶの」
レドナ「それってまさか・・・!」

一瞬の沈黙を置いて、レドナが驚きの声を上げた。

シーフォ「そう、もしかしたら一般人を選び、自分の所持者にしている可能性も十分にある」
レドナ「ちっ、候補が絞れないとなると、厄介だな・・・・。
    でも、確率的には一般人に渡る可能性が高い、そうすれば押収も簡単だろう」
シーフォ「それが、そうもいかないのよ・・・」

その言葉にレドナは驚いた。
理由を問わずとも、シーフォが続けてこういった。

シーフォ「あの本の所持者には3人のベルゼルガと呼ばれる守護者がつくの。
     奪還しようとしても、その3人と戦う必要が少なからず生まれてくるわ」
レドナ「ほんとに厄介な代物だな」
エンフィ「ちゃんと、こっちでもできる限りのことは調べ上げるよ!」

大変そうに言うレドナにウィンクして励ます。

レドナ「あぁ、頼んだ。
    ・・・・ぁ、でもどうやって向こうとこっちで連絡しあうんだ?」
エンフィ「そのことは心配しなくてオッケー!
     これ、レド君の携帯のバッテリーと交換して」

そういって、エンフィは見た目何の変哲もない携帯バッテリーを渡した。
言われたとおり、レドナは自分の携帯のバッテリーを交換した。

エンフィ「よし!これでこっちの世界とあっちの世界での連絡はいつでも可能だよ~!
     面倒だから、私達のアドレスとかは事前に登録しておいたよ~」
レドナ「さ、サンキュー。
    ほんと、進んだ時代も進歩したなぁ・・・」

外見は変わらず、中身がとてつもなく変貌した自分の携帯を見ながら、呟く。
すると、レドナの携帯は7:00を刻んでいた。

レドナ「やっべ、そろそろ帰っとかねーと」
エンフィ「あ、ちょっと待った!」

呼び止めるエンフィが、今度は白い箱を渡した。

エンフィ「これ、ここの制服ね。
     なるべく、こっちに来る時はこの制服を着てたほうがいいよ、特に理由はないけど」
レドナ「そのほうが雰囲気でるからか?」
エンフィ「まぁね」

微笑するエンフィ。
そして、レドナは制服を受け取った。
ここで、初めてなぜAZ近くに更衣室があったのか理解できた。

レドナ「じゃ、そろそろ戻るよ。
    今日は、いろいろありがとな」
シーフォ「えぇ、じゃあ、また情報が入り次第に」
エンフィ「まったね~!」

軽く手を振り、レドナは走ってAZへと向かった。
途中で更衣室に、制服を置いた。
すると、ロッカーの一つに「Redona Genesic」と書かれているのがあった。
その横のカード挿入口に、IDカードを入れると、ロックが解除され、扉が空いた。
そこに、制服を入れて、カードを抜いてロックし、再びAZへと走った。

同じ用法にて、レドナの存在は地球へと移動した。
今レドナは、神下大橋の河川敷の地面を踏みしめている。
暗くなった夜道を、自宅目掛けて走る。

レドナ「・・・・ん?」

走るレドナの目の前に、小学生ほどの少女がこちらに向かって歩いていた。

レドナ(こんな時間に、よくもまぁ1人で歩いてるもんだな)

素直に感心しつつ、レドナは見向きもせず、その少女の隣を通り過ぎた。
すると、

???「お前が、レドナ・ジェネシック!!」

突然、少女が声を上げた。

レドナ「!?」

急いで振り向く。
すると、少女が着ていた服がはじけ、真紅のドレスに変わる。
レドナは一瞬でそれがリーンジャケットであることを察した。
それを感知し、マプティラズディが自動的に戦闘区域を張った。

???「渡してもらう!お前に取り付く神を!!」
レドナ「な、なんのこ――」

言い終える前に、少女の武器が具現化される。
ゲートボールのパットのような小型ハンマー状の武器だ。
それを両手に握り、レドナに襲い掛かる。

???「くらえぇっ!!」
レドナ「ちっ!」

振りかぶるハンマーの攻撃を、寸前で低く後ろに飛び、回避する。
そのまま少女はハンマーを振り上げ、回避したレドナの頭上にジャンプした。
落下してくるハンマーの速度を目に焼きつけ、レドナはグリュンヒルEXを具現化させた。
同時に、左手にはレムリアブレッドを具現化させる。
グリュンヒルEXにレムリアブレッドを装着し、一間置いて、弾丸が2発排出される。
瞬時、グリュンヒルEXの刃が緑色に輝き始める。
そのまま、レドナは上向きに空を十字に斬った。

レドナ「いっけぇぇっ!!」

切っ先が緑色に輝き、魔力の結晶体となり、ハンマーとぶつかる。

???「打ち砕け!!フィトラファイゼン!!」

ハンマーの武器名であろう名前を呼び、少女は一層ハンマーを握る手に力を入れる。
数秒の鍔迫り合いは、両者引き分けで終り、レドナの放った攻撃は弾かれた。
だが、その数秒はレドナにとっては形勢逆転の一瞬となっていた。

地面に着地した、少女を待ち構えていたのは、4本の緑色の魔力ビームだった。
無駄に曲がるそのビームは、追尾式であることが一目で分かった。
レドナが数秒の間に取った行動。
それはグリュンヒルEXに登載されているガルティオンの原理を利用した遠距離攻撃だ。

???「プロテクトッ!!」

少女は、左手を前に差し出す。
瞬時に赤い魔法陣が展開され、防御シールドを形成する。
その魔法陣は、レドナが見てきた丸いものではなく、三角形の形をしていた。

レドナ(見たことのないタイプ防御魔法陣だ・・・)

防御シールドにビームが当たり爆煙が巻き起こる。

???(ちっ、煙がじゃまで見えねー・・・)

イラつく少女、しかし、すぐに耳を研ぎ澄ませレドナの位置を把握しようとする。
目を瞑り、集中させる。
沈黙が続く――。
その時、コツンと地面に何かが落ちる音がした。

???「そこだぁっ!!!」

少女のフィトラファイゼンが物凄い勢いと威力で、その場に叩きつけられた。
しかし、そこにはレドナの存在は愚か、グリュンヒルEXさえもない。
あるのは、弾丸の空だけだった。
少女は、一瞬で事を悟った。

???「しまった!」
レドナ「はぁぁっ!!」

漆黒の胴体に、緑に輝く刃のグリュンヒルEXが、背後から振り下ろされる。
咄嗟にフィトラファイゼンでガードするが、すぐに怯み、数メートル弾き飛ばされた。
少女は、地面に倒れこんだ。
その手から、フィトラファイゼンが離される。

???「ぐぅ・・・・っ」
レドナ「反対方向から投げた弾丸の音に反応して飛びつくとは・・・"ぬるい"な」
???「う、うるせぇっ!!」

武器を取ろうとする少女。
しかし、後一歩のところで、武器をレドナが蹴っ飛ばした。
変わりに、グリュンヒルEXが少女の首元に突きつけられる。

レドナ「さぁ、吐いてもらおうか、目的を」
???「その前に、その剣を離してもらおう」

レドナの首に、銀色の剣が突きつけられた。

レドナ「!?」
???「シ、シュレス!!」

シュレス、と呼ばれたその女は、レドナの背後に立っていた。
シュレスもまた、鎧のようなリーンジャケットを着用していた。

シュレス「シルビアが死ぬと、主が悲しむ。
     それだけは避けないとな」

レドナ(主・・・・こいつらはベルゼルガ、デモンアルターの守護者か!?)

大人びた声で、何処か説教交じりに少女に言った。

シルビア「うるせー!今からコイツをボコそうとしてたんだよ!」
シュレス「そうか、それはすまなかったな」

そうは言うものの、レドナの首に突きつけられた銀色の剣を離すことはなかった。

シュレス「さぁ、レドナ、はやくその剣を地面に置け」
レドナ「・・・・くっ」

仕方なく、レドナはグリュンヒルEXを離す。
グリュンヒルEXは、ゴツンと地面にぶつかった。

シルビア「へっ、あたしをここまで追い込んだことは褒めてやる!
     褒美に死ぬ前に最後一言だけ何か言わせてやるよ!」

その言葉を聞いたレドナは、ニヤリと笑うのを堪えた。
敵の愚かすぎる行為に、レドナは甘え、形勢逆転の出し忘れの札を出した。

レドナ「じゃ、遠慮なく・・・・。
    来い!!クァルファーレの黒衣っ!!!」

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